古めかしい雰囲気のあるアパートにある一室、栗山家。
TW・Silver Rainをご存知じゃない方は回れ右。
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自分の弱さを痛感した一日。
今も頭の中で繰り返される光景、旋律…
あんな苦しい光景はいやだ
あんな辛い思いはいやだ
「能力者」である以上それはきっと難しいことなんだろうけど…。
そんな気持ちばかりが胸を締め付ける。
もう少し自分が強ければみんなは傷つかなくて済んだかもしれない。
もう少し自分に力があれば、あのお爺さんをこの世に留める苦しみから救ってあげられたのかもしれない。
単純な頭ではそんな答えしか浮かばなくて。
力の無さが新たな苦しみを生むなら、アタシは何をしてでも強くなる。
大事なものを守る為に、気持ちも、力も、強く。
もっと、もっと……!
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8月31日の夕方 ―栗山家。
キッチンでは鼻歌混じりで料理を作る円の姿があった。
テーブルにはすでに、いつもよりもさらに手の込んだ料理の数々が並んでいる。
―そう。今日は、愛娘の誕生日だ。
図らずとも、気合も入るというものだろう。
なにより、親馬鹿な円がこの日に気合を入れないわけはない。
ガチャ、とドアの開く音がした。
続いて聞こえてきたのは、いつもの「ただいま」の声。
円は、料理を中断して自分の娘を出迎えようと玄関へと向かった。
「エレナお帰りー!あのな、今日はお父さんが腕によりをかけて…」
言いかけたところで、いつもとは違った様子に気付き言葉を止める。
少し潤んだエレナの目。口数も少なくボーっとした感じだ。
普段は使わない脳をフル回転させ、思考をめぐらせた末に出た結論に円の顔は青褪めた。
「エレナァァァァ!いいい、いじめられたのか!?誰だ、誰にやられた!?教えなさいっ、俺がこの世から消し去ってy「違うから」
冷静にツッコミを入れたエレナは手に持っていた袋を目の前に持ち上げた。
こんなの朝は持っていなかった、と円は首をかしげる。
「が、学校のみんなからの、誕生日プレゼント…」
はにかんでそう言ったエレナ。
その言葉を聞いて、やっといつもと違った様子のワケがわかった。
まだ小さい頃に母を亡くして以来、父親と二人でずっと旅をしていた。
世界中を転々とする中、一つの場所に長居をすることがなかった為か…
エレナは自分の誕生日を、父親以外と祝った事がない。
楽団のみんなも遠路はるばる手紙を飛ばしたりして祝ってくれるが、“家族”の内に入る楽団のみんなに祝ってもらうのとは、また少し違う。
「友達」に祝ってもらう誕生日。
これがエレナには大きかったのだ。
「エレナ…」
抱きしめた体はまだ小さい。
こんなに小さな体に、今までどれ程の辛さを与えてきたんだろうと責める毎日で。
自分は、父親として何かしてあげられてるのだろうか…?
そうよぎった時に、不意に背中に回された手。
ぽんぽん、とあやす様に繰り返す手に思わず泣きそうになる。
「お父さん、料理作ってくれたんでしょ?一緒に食べよう。」
「ごめん」と言う事もこの子は嫌がるから、せめてあり余るほど、溢れるほどの愛情を。
強くて脆いこの子を守ろうと…。
金色の髪を一撫でして「そうだな、食べるか」と、円は笑ってそう言った。
料理を食べた後、母の写真に向かって嬉しそうに貰ったプレゼントの事を話すエレナ。
きっと彼女も、そんな娘を空から暖かく見守っているんだろう…。
☆オマケ☆
「それでね、これがいっくんから貰った…」
「Σ(男……!?)」
手から滑り落ちた大皿が一つ、盛大に割れた。
キッチンでは鼻歌混じりで料理を作る円の姿があった。
テーブルにはすでに、いつもよりもさらに手の込んだ料理の数々が並んでいる。
―そう。今日は、愛娘の誕生日だ。
図らずとも、気合も入るというものだろう。
なにより、親馬鹿な円がこの日に気合を入れないわけはない。
ガチャ、とドアの開く音がした。
続いて聞こえてきたのは、いつもの「ただいま」の声。
円は、料理を中断して自分の娘を出迎えようと玄関へと向かった。
「エレナお帰りー!あのな、今日はお父さんが腕によりをかけて…」
言いかけたところで、いつもとは違った様子に気付き言葉を止める。
少し潤んだエレナの目。口数も少なくボーっとした感じだ。
普段は使わない脳をフル回転させ、思考をめぐらせた末に出た結論に円の顔は青褪めた。
「エレナァァァァ!いいい、いじめられたのか!?誰だ、誰にやられた!?教えなさいっ、俺がこの世から消し去ってy「違うから」
冷静にツッコミを入れたエレナは手に持っていた袋を目の前に持ち上げた。
こんなの朝は持っていなかった、と円は首をかしげる。
「が、学校のみんなからの、誕生日プレゼント…」
はにかんでそう言ったエレナ。
その言葉を聞いて、やっといつもと違った様子のワケがわかった。
まだ小さい頃に母を亡くして以来、父親と二人でずっと旅をしていた。
世界中を転々とする中、一つの場所に長居をすることがなかった為か…
エレナは自分の誕生日を、父親以外と祝った事がない。
楽団のみんなも遠路はるばる手紙を飛ばしたりして祝ってくれるが、“家族”の内に入る楽団のみんなに祝ってもらうのとは、また少し違う。
「友達」に祝ってもらう誕生日。
これがエレナには大きかったのだ。
「エレナ…」
抱きしめた体はまだ小さい。
こんなに小さな体に、今までどれ程の辛さを与えてきたんだろうと責める毎日で。
自分は、父親として何かしてあげられてるのだろうか…?
そうよぎった時に、不意に背中に回された手。
ぽんぽん、とあやす様に繰り返す手に思わず泣きそうになる。
「お父さん、料理作ってくれたんでしょ?一緒に食べよう。」
「ごめん」と言う事もこの子は嫌がるから、せめてあり余るほど、溢れるほどの愛情を。
強くて脆いこの子を守ろうと…。
金色の髪を一撫でして「そうだな、食べるか」と、円は笑ってそう言った。
料理を食べた後、母の写真に向かって嬉しそうに貰ったプレゼントの事を話すエレナ。
きっと彼女も、そんな娘を空から暖かく見守っているんだろう…。
☆オマケ☆
「それでね、これがいっくんから貰った…」
「Σ(男……!?)」
手から滑り落ちた大皿が一つ、盛大に割れた。
※HPは日にち的意味で(ぇ)
「うう~、どうしよう…」
蝉が煩く鳴きつづけるある夏の午後。
扇風機に向かって呟く一人の少女。
横のテーブルの上には書きかけのプリントと、放り投げられた鉛筆。
今彼女は、壁にぶつかっている。
そう…「夏休み」「学生」と揃えば逃れる事はできない壁、「夏休みの宿題」だ。
「うう~、どうしよう…」
蝉が煩く鳴きつづけるある夏の午後。
扇風機に向かって呟く一人の少女。
横のテーブルの上には書きかけのプリントと、放り投げられた鉛筆。
今彼女は、壁にぶつかっている。
そう…「夏休み」「学生」と揃えば逃れる事はできない壁、「夏休みの宿題」だ。